セカンドオピニオン(改善プラン提案コース)実例-2

梅ヶ丘の家(変形敷地の住宅)

この家はピストル型の変形敷地における住宅の計画です。

上の図面は建て主さんから頂いた図面です。

敷地が気に入り、建築条件付の内容のまま土地の契約をされたそうですが、
施工会社と計画を進めている中で、この会社では変形敷地での経験がないことが分かり、不安に感じられてこちらでのプランの見直し、提案の依頼を頂いたものです。

建て主の方の基本的なご希望は主に以下のようなことでした。

・南側に既存の家があって変形した敷地であっても「明るい家」
・2階を生活の中心の場とする家
・原案における各室の配置の確認

つまり最も大事にしたいことは
「生活の場の明るさ」

これらのご要望に対して、原案は以下のように考えられるものでした。

・配置計画:
敷地に対する建物の基本的な位置としては、北側に家を寄せて南側にオープンスペースを設けるオーソドックスなもので、特に気になる点はありませんでした。

しかし、洋室の正面を通るアプローチ、玄関手前の大きな軒下空間、北側への洋室の配置といった点では、プライバシー、うっとうしさ、採光条件という点で疑問点の多いものでした。

・平面計画:
1階においては前述の北側の洋室、2階においては家の北側に和室、南側に水回りが配されているのは気になるものでした。

洗濯場の直近にバルコニーを設けるというというのは、家事動線を考えると非常に効率的で、
また洗濯場脇に浴室、キッチン、更にはトイレ等の水回りをまとめるのも合理的な考え方だと思います。
また、水回りをまとめることは設備を計画としても合理的な内容ともいえるものです。

一方で、これによりリビングが午後には窓からの採光が入らなくなりがちなものとなっていること、和室はリビング以上に窓からの陽射しは望めないものと思われ、
これは2階にリビングを設ける意図とは矛盾するものを感じるものでした。
また、南側のキッチンは食材が腐りやすいともいえるものです。

・構造計画:
原案は、1階と2階の壁位置が合っていない部分が多く、特に東側(玄関、リビング廻り)においては、1階は独立柱(ピロティ形式)で2階を支えるものとなっています。
少なくともこの周辺に水平力(地震力)を負担する壁が1階にないことからは、部分的にでも鉄骨造にしなければ建築は困難と思われると共に、家全体としても非常に構造的なバランスが悪いもの(偏心した構造)と捉えました。

また、家の形態は凸凹が多く、外装や断熱にかかる費用は一般的な住宅に比べると相当に多くなるものと思われました。

つまり原設計のプランで計画を進めると、構造工事費、外装工事費等に必要以上のコストがかかるものと思われました。


以上のような点を問題点としてとらえ、その改善案として提示したのが以下の案です。


 


【A案】

基本的には原設計の部屋の配置をベースとした案です。
 ・1階北側洋室のプライバシー、採光条件
 ・玄関廻りのうっとうしさ
 ・2階リビングダイニングと和室の採光、通風条件
 ・1階洋室(2室)の手狭さ
 ・構造上の脆弱、アンバランス
といったことの改善をはかるべく検討した案です。


【B-1案とB-2案】

改善すべきと考えた事柄を、A案よりも更に発展させることを目的として検討した案です。
この案の主な変更点は、
・和室と趣味の部屋の設置階の入れ替え
・玄関の位置変更
・リビングダイニング、キッチンの位置変更
・構造、形態の合理化
といったことによりプランの改善をはかるべく検討した案です。




【C案】

提示頂いた原設計のプランは、これまで設計打ち合わせと検討を重ねた結果のものというお話でした。
A案、B案は、基本的にこの原設計案をベースに改善をはかるべく検討をした案ですが、
C案については原設計をベースとせずに検討をさせて頂いた別案です。
当方で今回の条件での設計依頼を頂いた場合、打合せ初期のたたき台として提示する案としてはどのようなものかという観点で検討した案です。


【最終案(C案ベース)】

今回の提案の後に、建て主さんよりC案の一部の修正依頼を頂きました。
施工会社さんに渡すためという事でした。


資料提出後に頂いたメール文の一部をそのままご紹介させて頂きます。
(ご参考まで)


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何らかの条件のもとで家を建てなければならない場合でも、今回のように中川さんのようなプロの方の貴重なご意見をおうかがいする機会が持てましたことで、
今後の方向性、可能性が大きく変わったと確信しております。

我が家と同様の不安や迷いをお持ちの方はたくさんいらっしゃると思いますので、事例紹介を通してお役に立てればこちらとしても幸いです。
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