この住宅は、都心からほど近い杉並区内の住宅地に建つ高齢者の住まいです。
もともとのご自宅(母屋)を子世帯に譲り、その庭に、自分たちのついの住み家を計画したものです。
設計にあたっての主な条件は以下のようなものでした。
・趣味の庭いじりのための庭をできるだけ残す
・子世帯の住まいとなる母屋の日当たりや視界をできるだけ遮らない
・母屋とはつながった家とする
・寝室の他に、夫婦それぞれの時を過ごす部屋を設ける
・夫婦ふたりだけの住まいでもあることから20~25坪程度の家とする
これらの条件から、日常を過ごすリビングダイニングとキッチンの面積は、
合わせて7坪程度しかありませんでした。 そこで、
・非常に限られた面積のリビングダイニングであっても、空間の広がりを感じる場所とする。
・全ての部屋は、このリビングダイニングに直接つながる家とする。
この二点により、小さな家であっても、ゆったりした住まいとなるように設計したものです。
[平面計画]
基本的な平面構成としては、庭に大きく面する居間、これに隣接するダイニング・キッチン、
寝室、水廻りを、全て1階に配し、夫婦それぞれの趣味と収納の場所を2階に設けました。
つまり、基本的な生活は全てが1階にてまかなえるようにしたものです。
1・2階をつなぐ吹き抜けは、夫婦それぞれの個室とリビング・ダイニング等、全ての部屋同士を
五感でつなぐものとして、ひとりで個室にいても、安心して時が過ごせるように考えたものです。
[吹き抜け]
間口が一間という小さな吹き抜けですが、トップライトからの光が降りそそぐ、
明るい場所としました。これにより、天井を低くおさえたリビングや玄関廻りに
対して、空間に変化と広がりを感じるものとしました。
設計段階、打合せ時の模型はこちらです。
<玄関>
子世帯とつなぐ渡り廊下部に設けた玄関です
[仕上げ材]
できるだけ、自然の素材を生かす家づくりを心がけました。
アプローチの床は、イペ材の枕木を敷き込み、デッキや玄関内もこれと同じイペ材です。
この木は、土中にあっても25年は腐らないといわれる南米産の木で、重く固い木です。
また、壁は内外共、全て左官仕事による土壁調のものとし、創り手の手の跡が残り、味わいと暖かみを感じられるものとしました。
玄関より見た庭のデッキです
<リビングダイニング(1階)>
リビングよりダイニングを望む(左手がキッチン、ダイニングの先は玄関)
玄関よりリビングダイニングを望む(正面奥はたたみの間)
写真上:リビングより、吹き抜け下部のダイニングとキッチンを望む
写真下:ダイニングの上部吹抜けのトップライトと照明器具
<たたみの間(1階)>
洗面所よりたたみの間を望む
写真上:たたみの間より南庭を望む
写真下:たたみの間よりリビング、玄関を望む
<収納>
家具は、ニーズの変化に合わせて自由に配置したいとの事で、造り付けの家具は
個室には不要という建て主さんの意向により、この家ではあまり家具は設けていません。
用途の変わることのないリビング廻りと水廻りにのみ造り付けの収納家具をつくりました。
写真上:収納1(リビングのTV・AV棚)
写真下:収納2:食卓脇の食器棚
収納3:階段下の引出収納
<2階>
フリースペース
奥さまのための趣味と収納の場です。
床暖房とともに天井に設けたふたつのトップライトが大変に好評です。
たたみの間
ご主人のための趣味の部屋です。
デスク越しにダイニング上部の吹抜を望む
2階から見おろしたリビングダイニング
<外観>
南側外観(右手奥の赤い屋根の家が母屋)
母屋から見た外観(夕景)
工程
設計期間 2000. 8~2001. 5
工事期間 2001. 7~2002. 1
敷地条件
第1種低層住居専用地域、
準防火地域、第1種高度地区
道路幅員 4.0m
外部仕上
屋根:カラーガルバリウム鋼板
外壁:アクリルリシン櫛引き
軒天:モルタル、防汚ウレタン塗
開口部:アルミサッシュ(ブラック)、木製建具(タモ練付)
外構床:イペ材枕木(アプローチ)、イペ材(デッキ)
内部仕上
居間・食堂・キッチン・フリースペース
床:フローリング(床暖房用)
壁:PB アクリルリシンこて塗り
天井:PB AEP塗り
玄関
床:フローリング
壁:PB アクリルリシンこて塗り
天井:パイン本実板張、オスモカラー塗り