一般に、住宅設計を行う建築設計事務所は数人規模の事務所がほとんどで、営業の専任担当者はいませんので、契約を急いだり、ノルマが課せられているようなことはありません。
そのため、家づくりについての充分な打ち合わせをした上での設計契約が可能です。
また、住宅に関する知識が浅いまま、設計や工事の契約をするというリスクも少なくできます。
注)
もちろん質より数をこなすことを優先している事務所もありますし、少しでも案を作成したら有料という建築家もいます。相談時にいろいろ話を聞いてから進めることは大切です。
なお、ここでいう設計事務所とは、施工会社やメーカーからの仕事を受けている所は対象外としてのお話です。下請である以上、建て主さんよりも利害関係のある元請の立場に立たざるを得ないのは説明するまでもないでしょう。
よりよい家づくりには、設計者や施工者とのお互いの信頼関係が必要不可欠です。 また作風と同時に、相性が合うかどうか、相談をしやすい人かどうかということも大切です。
まず信頼できる設計者に出会うことが、よりよい家づくりへの第1歩です。
住宅設計を行う設計事務所は、決して敷居の高い所ではありません。
ほとんどの事務所の人達は、気さくに問い合わせに応えたり、相談にのってくれるはずです。
直接会って話を聞く中で、自分に合った設計者を見つけると良いと思います。
規格や建材メーカーなどの制約によらない、自分だけの家づくりが可能となります。
建築設計事務所は通常、特定の建材メーカーや工法、施工会社とは利害関係のない独立した立場にあります。
このことから、設計を専業とするスタッフにより、材料や工法にとらわれない、自由で質の高い空間デザインを計画することが可能となります。
また、材料ばかりでなく、構造面でも自由度が高いことから、動線計画、間取りなどに関して自由度の高いプランを追求しやすいものとなります。
注)
設計事務所によっては、特定の工法や施工会社とタイアップしている所もあります。
メリットもあるでしょうが、それが制約にもなるものと思います。
これも事前に確認をする必要があると思います。
社会問題として取り上げられることもある、工事中の手抜きや欠陥住宅を防止し、質の高い住まいにするため、設計者は設計通りに工事が進んでいるか、変更や追加にどのように対応するか、施主に代わって監理をします。
また、不当な追加工事費請求の防止や、金額上のトラブル防止が避けられるものにもなります。
注)
ここで最も大切なことは、監理する人が「施主の立場に立って物事を見ることができるか」ということ。また時として「第3者としての中立性を保てるか」ということです。
監理する人が、工事する立場の内部の人であったり、利害関係のある立場であれば、多少(?)のことは 見過ごされてしまう可能性があることはあえてご説明するまでもないでしょう。
独立した設計事務所(設計監理者)の存在は、設計だけでなく、工事段階においても重要な役割を担っています。
施工会社の選定:
設計事務所は、設計を行った住宅の立地や設計内容、予算等、様々な条件に適する施工会社候補に関して、リストアップや選定を行います。
もちろん、候補とする施工会社に関する情報や選定理由を建て主の方に説明します。
見積りの調整・査定・比較:
設計事務所は、一般に複数の施工会社から工事費の見積書を徴収し、見積書の精査や比較を行い、適切な会社を選出して、建て主に提示、説明を行います。
・見積書に図面の内容との食い違いがないか
・図面の内容に対してその見積金額が妥当か
これらを整合させることは、契約やその後の工事に向けての大切な作業です。
不当な追加工事費請求の防止:
一般に、工事が完了した時点で、工事途中の変更や追加工事に対しての費用の精算を行います。
設計事務所は、追加となる工事を着手する前に変更金額の査定や確認などを事前に行ないます。
この時点で関係者がその内容を把握、了解していない項目に関しては、追加費用は認めないものとする為です。
このようにすることで、工事の後半になってからの不要なトラブルや出費が生じることを防止しています。
注)上記同様、施工会社等とは独立した立場の設計事務所であることが前提です。
一般に住宅メーカーは、その組織力や営業、総合力では、非常に優れた組織です。しかし、基本的には、「限定されたパターンによる家」を量産、販売することによって、開発や営業、広告(CM、住宅展示場、パンフレット...)等に関わる諸々の経費を、工事費の中で消費者に求めているものです。
「無料設計」というのも、工事契約額の中にその費用は当然見えない形で含まれているのは言うまでもないでしょう。
(つまり、「見えない金額だからこそ安くすませる→設計には手間をかけない」ということです)
また、実際の工事をするのは、通常、一般の工務店がメーカーの下請けとして施工するものです。
住宅メーカーの家はその技術力により、現場での加工はあまりなく、誰にでも組み立てられるようにできています。
これがメリットで工事期間も短縮できるものですが、腕のある職人が不要の家づくりですから、設計事務所が手がける現場とは、「モノ」も「関わる人」も自ずと異なるものとなります。
住宅メーカーに依頼する理由として多いものは「安心感」だと思います。
しかし「大手だから安心」というのはひと時代前のことではないでしょうか。
確かに親方ひとりで運営しているような工務店では不安ということはあるでしょう。
多くの場合、設計事務所が付き合う施工会社は、現場担当者の他に施工図を描くスタッフを抱えているような、それなりの組織力を持っている所です。
また、これらの施工会社はほとんどの場合、住宅が完成するまで、業者が倒産するなど万が一の事態に備えた住宅完成保証制度(国庫の補助金と損害補償のサポートを併せて保証の基礎とする、確実で安定した公的な制度)といったものに加入していますので、「規模が小さいから不安」というのは当てはまらないと考えられます。
(もちろん施工者選定や契約にあたってはこれを確認する必要があります)
また、2009年10月以降に引き渡しを行う住宅については、建設業者などに対して住宅瑕疵担保履行法に基づき、住宅取得者に対する保護が義務づけられることになりました。
住宅メーカーにしても一般の施工会社にしても、大手だからだから安心という考え方ではなく、「信頼性をどのように確認していくか」ということが今後の家づくりのポイントになってきていると思われます。
設計事務所による家づくりは、「とにかく早く建てたい」「土地探しから、税金対策まで 全てをコーディネートしてほしい」という面で弱いのは否めません。
しかし、住宅メーカーの嫌う「変形敷地」「狭少敷地」での新築が可能なこと、そして何よりも、先にあげた「納得できる家」「自分だけの家」「手抜き防止」「財産の有効活用」を可能とすることは、設計事務所による家づくりの最大のメリットであり、特徴です。
住宅を主体としている工務店の設計施工による家づくりは、昔ながらの棟梁による家づくり、親方にひとこと相談すれば、「へい、おまかせください」といった良い面も残っている所もあるでしょう。
しかし、近年求められる新しい技術や様々な要望に応え、特に工事開始前に充分な設計打ち合わせのできる所は、残念ながら、非常に少ないように思われます。
費用面を含め、工事を建て主の立場で監理をする人が不在なのが、設計者としては最も懸念する点でもあります。
設計事務所に支払う設計料とは、一般に設計図完成までにかかる設計費と、工事開始から完成までの様々な検査や変更業務にかかる監理費を合わせた総称で、設計監理料をいいます。
施工会社を決めるのにあたり、設計図に基づいて同じ条件で入札という形式で工事費を確定することになりますので、設計料を含めた全体工事費はここでメーカーとの差が少ないものになると考えています。
(施工会社の経費が少ない分、むしろ安くなっているいともいえますが...同条件では比較はしにくいものでもあります)
坪単価という観点からすると、メーカー住宅は、そのメーカーによって価格帯がほぼ決まっています。
安い坪単価のメーカー、高い坪単価設定のメーカー。
設計事務所の手がける家もローコスト住宅から高級住宅までありますが、平均的な価格帯という点では、メーカー住宅の中間的な価格帯とおそらくはあまり差はないでしょう。
何といっても、設計監理を行うことにより、「見積もりの審査」や「より質の高い家づくり」がされることから、長期的視点からすれば安いものと考えています。
一般的に、住宅の設計監理料は、総工事費や立地、設計に求められる内容、設計者の知名度等の条件によりますが、おおむね工事費の8~15%程度です。
(一般に、工事費が高くなれば上記の%は少なくなり、安ければ高くなります)
設計監理料の内訳としては、基本設計費が3割で、実施設計費が3割、監理費が4割といったように分割しているのが一般的です。