私がこれまで手がけた住宅では、大半の家に家族共用のデスクコーナーをはじめ、ご主人の為の書斎や家事用のデスクカウンターであったりと、
何らかの形でパソコンや読書などの為のスペースを設けてきました。
しかし、今回の新型コロナにより自宅で仕事をする人が増え、新しいライフスタイルとして、これらを設ける位置や作業環境に対するニーズはこれまでと少し変わってきています。
主な要因としては、オンラインでの会議や授業などに対応できるよう、家族が集まる場所とは異なる場所にする必要が生じた事によるものです。
そこで、いわゆる個室として独立した書斎を設ける場合は別として、リビングやダイニング内に設けるデスクコーナーではなく、
より今日的なニーズに近いもの、ニューノーマル時代のプロトタイプと思われる家の中のワークスペースをご紹介させて頂きます。
家によって、ご家族の仕事も作業内容も異なりますし、ワークスペースの使い方、使用頻度はそれぞれ異なるものです。
また、世代、家族構成、お子さんの年齢、生活スタイルも人それぞれ異なりますので、正解というものはありませんが、
以下に挙げる3例は、設置パターン(位置・形態)例として大別できるものかと思います。
<ワークスペース事例1-関町北の家>
リビング脇に面する形でワークスペースを設けた事例です。
広さは3.2帖、カウンター長は2.6m。
このワークスペースはデスク+椅子ではなく、たたみの間の掘りごたつ形式のデスクとしたものです。
リビングとは引き戸で仕切ることができ、仕事や読書の場としてだけでなく、時には昼寝をしたり、洗濯物を畳んだりとさまざまな用途に使うことができる多目的室です。
腰掛ける畳の下は全て収納庫としたのもこのワークスペースの特徴です。
タイプとしては「リビングの付属室」と位置づけができるパターンのワークスペースです。
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<ワークスペース事例2-烏山の家>
階段の上部、2階の踊り場脇に設けたワークスペースです。
リビングやダイニングとは独立した場所である一方で、ダイニング上部の吹き抜けに面し、家の中の気配が感じられる場所に設けたものです。
開口部は外の木々を望む北側に設け、柔らかな安定した光が入るデスクコーナーです。
L型のカウンター後方は全面書棚を併設しました。
家族が集まる諸室との関係性としては「独立性が高いワークスペース」というもので、
ニューノーマル時代におけるワークスペースのプロトタイプのひとつと言えると思います。
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<ワークスペース事例3-宮坂の家>
キッチン脇の通路を広めにしてデスクカウンターを設けたワークスペースです。
大きな特徴はカウンター脇に設けた書類棚です。
一般的には使い勝手の悪い階段下のスペースですが、階段の形状に合わせた大型の収納ボックスを格納して、引き出すと収納ボックスの両側面を書類棚として利用ができます。
3方向から使用するキャスター付の大型ボックスを製作し、階段下を有効に活用したものです。
リビングやダイニングとは仕切りはありませんが、少し奥まった位置とすることで独立性を持たせたワークスペースです。
廊下と機能を兼用させた最も「省スペースのワークスペース」といえます。
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今回、住まいにおける「ワークスペース」をこれまで手がけた住宅からピックアップ、整理をしてみました。
家ごとにその位置や形態が大きく異なるものであることにあらためて気づくとともに、
今日求められている「新しい生活スタイル(ニューノーマル時代)」におけるワークスペースのあり方を考えさせられるものでした。