いいプラン(間取り)づくりの設計ノウハウ

機能的・合理的で暮らしやすい家づくりの為に
~チェックポイント・7項目~

住宅の設計(プランづくり)にあたっては、自身が手がける案件以外にも、建築相談やセカンドオピニオン
サービスといった業務などを通じて、良いプランとするための知恵や工夫などを経験、習得してきました。

住宅のプランは内的・外的な要因、希望する生活スタイル等により当然同じ物にはなり得ないものですが、
暮らしやすく快適な家とするための基本的なパターンや手法はあるものと考えています。

このページでは、「いいプラン(間取り)」「後で後悔することのないプラン※」とする為の手法について記させて頂きます。
(※後で後悔しない為の手段は、「事前にあらゆる可能性を検証した上で方向性を定めていく」事に限ると考えています)


1.諸室の配置を検証する
具体的で詳細なプランの検討に先立って、敷地の中に必要とする諸室やスペースを
広さを考慮した上でどの位置に配置するかを検討することをゾーニング(配置計画)と呼びます。
敷地の中に建物をどこにどのように建てるかを含め、諸室の基本的な配置を検討するものです。
具体的にプランを検討するのに先だって、このゾーニングの検討は必要不可欠です。

さまざまな諸条件や制約がある中でも、数多くの可能性がある場合もあれば、限られた選択肢しかない場合もあるものですが、
最初からひとつに限定してプランを進めるのは、後になって後悔する事になりかねません。

ゾーニングのパターンごとにおおまかななプランを作成した上で、
それらのメリットとデメリットを検証、比較しながらひとつの方向性に絞り込んでいくという作業になります。
このように「案(可能性)を考え尽くしておく」ことは、その後に確信をもって設計を進めていく、或いは工事を進めていく上で、
建て主の方にとっても設計者にとっても有意義であり、かつ必要不可欠な作業、進め方だと思います。


2.基本寸法を見直す
建築の基本的な寸法は、一般的な建材が尺寸法でできていることもあり、これに準じて
910mmモデュール(基本単位)寸法とすることが効率の良いものとなっています。

一方で、現在のようにキッチンやベッド等の洋家具や多くの家電類を置く家では、
この単位寸法による間取り(スペース)はそぐわないものであったり、無駄なスペースを設けることになる要因でもあります。
 
単純な事例としては、6帖(4.5帖)の部屋では狭いが8帖(6帖)までは取れないといったケースはよくあるものです。
これは単に部屋の広さというよりも家具の配置上の問題に起因していると思います。
「1間半の間口にベッドを縦に入れると通路巾が取れない」
「1間の両側にクロゼットを置くと通路巾が取れない」
といった事はよくある一例といえます。
 
このようにプランの検討にあたって、従来の1間、1間半、2間といった基本寸法は、家具のレイアウト等を考慮すると、
決して機能的で合理的なプランをつくる単位寸法ではないケースが多々あるものです。

そこで、尺寸法を使用しながらも各スペースを有効に利用する為の手法として、
当事務所では下図のような寸法体系を使いながらプランを考えるものとしています。

上の図は4.5帖~8帖までの部屋の形状パターンです 

上の図は家具を考慮した際に無駄が生じにくいプランの各所寸法を記したものです
(910×3+910/2=3,185、910×3+910×2/3=3,337は柱間として合理的な寸法となる事を示しています)

3.廊下を少なくする
多くの家は限られた容積率や床面積、予算の中でプランの検討を行います。 
そこで、できるだけ必要な諸室の広さを確保したり、家全体の面積を有効かつ合理的に使う手法として挙げられるのができるだけ廊下を少なくすることです。
廊下の面積分、他のスペースに充てることができる「省面積化」のメリットと共に、「動線の合理化」にもつながるものと考えています。

<手法1>
廊下を短くしたり無くすように計画するというのがまずひとつ目の手法です。
そのためには玄関や階段を家の中心付近(平面図でおへそに近い位置)とすることが可能であれば、比較的実現しやすいものです。

<手法2>
部屋数が多かったり細長い形状の建物、道路に面する敷地の間口が狭い場合等は、上記のように「廊下を少なくする」のは難しいものです。
そのような場合には廊下を広めにして片側、或いは両側を壁面収納として使用したり、洗面コーナーやデスクコーナーを設けたりといった形で、
廊下を移動するための単一用途の場所としてではなく、複合的な用途として利用すると、そこは廊下ではなくなるものです。
そのような手法により、これまでウォークスルークロゼット、子供用収納兼展示ギャラリー、家族共用パソコンコーナーといった複合用途の廊下としたプランを実現させたケースがあります。
  

4.水廻りをまとめる
水廻りを同一平面で分散させたり階ごとに異なる位置とすることは、給水・給湯管、排水管が長くなり、それに伴ってコストアップの要因となります。
配管の遮音の必要性の有無やお湯が出る時間の短縮、メンテナンス面、イニシャル・ランニングコストといった観点からは、
各階のそれぞれ近い位置に水廻りをまとめることは、設備計画上は合理的・経済的な手法といえるものです。
なお、これは使い勝手や要望によって一概に適用できるものではありませんので、あくまで合理化のための一般論です。

5.窓の位置
当事務所に設計のご相談や依頼を頂く方のほとんどの方が、家づくりのご要望のひとつとして挙げられるのは
「明るく風通しが良い家にしたい」ということです。
メーカー住宅のプランを提示されて「この窓の設け方で明るさは問題ないでしょうか」というご質問はよくお聞きするものです。

明るいインテリアや自然光を感じやすい家、空気が淀まない家の手法のひとつはまず窓の設け方にあります。

よく目にする住宅のプランでは、部屋の外壁側は、その壁の中央付近に窓を設けるようにしているものが多いものです。
これは外壁側に「入隅」と呼ばれる、陽が当たらず空気も動きにくい場所を設けるもので、私はこれをいつも問題視しています。
家具を置きやすいようにという意図はあるかも知れませんが、この部分は暗がりになったり、結露もしやすいものになる為です。
確かに工事する上では壁の途中に窓を設けた方がサッシの取付精度も気にすることなく行えるので簡単なのでしょうが、
これは造る側の論理であって、住む側の視点に欠けていると思っています。

そこで、私が「明るく風通しの良い家」とするために提案している窓の設け方は、
窓はできるだけ入隅に設けるというものです。

同じ大きさの窓であれば、窓は入隅に設けた方が明るい雰囲気のインテリアとなります。
その理由は、輝度とか反射光という観点によるものです。
窓から入った光が、その脇の壁を照らせば、光量が同じでも人は明るさを感じます(=輝度を高める)。
また、明るい色の壁であれば、その光は反射して部屋の奥まで届くようになります(=反射光を利用)。

これらについては下のイラストを参考にしてみてください。      

窓を分割して壁の両側の入隅に設けるとか、この手法を平面的にだけでなく断面的にも使用するといった形にすることで、
さまざまな光環境、外部からのプライバシーの確保、防犯性といったことへ対応することが可能になるものです。

また、窓の設け方は風通し(自然な通風)の観点からも非常に重要なものです。
部屋の南東側に空気の入口を設けて北西側に出口を設けることで、部屋の対角線上に空気が流れるようにするのが定石と言えます。
「家の作りようは夏をもって旨とすべし(徒然草)」というのは、エアコンがあるような現代の家づくりとは異なるものという面もありますが、
風向きや自然な換気をはかることは今も昔も変わっていませんので、その点では今日の家にあっても充分に考慮すべきものと思います。
また、暖かい空気の出口は部屋の上部に窓を設けるといった事も留意する必要があるものです。 

以上のように窓の設け方は非常に重要なものですが、一般には安易な形で窓の位置や形状が決められているのは
今日の一般的な住宅の残念な部分のひとつだと思っています。

「明るく風通しの良い家}とする為には、平面計画以上に断面計画が重要な場合が多いものです。
これに関しては、別のページにて記載していますので

こちら↓をご覧ください。
明るく風通しの良い家づくりの設計ノウハウ


6.アプローチと玄関廻り
自身で設計する際は、当然の事としてあまり問題視することは少ない場所ではありますが、プランのご相談を受けた際にはチェックポイントが多い部分のひとつです。
・玄関の広さ:家族全員(複数の人)が立てる広さが確保されているか
・三和土部の広さ:建て主さんが理解されていない広さになっている
・玄関の収納量:建て主さんの想定以上の収納量が確保されているか
・玄関の外部の広さ:外階段を上がった所に人が何人ぐらい立つスペースがあるか
(ドアを開ける部分には人が立てないことを考慮できていないケースがよくあります)
・玄関とトイレの関係:トイレの戸を開けると玄関から便器が見える形になっている
・上がり框の高さ:玄関の段差が建て主さんにとって最善の高さとなっているか
.....等、
当然おさえるべきポイントと思われることが、不明確であったり問題があるプランであることが多いものです。

7.ひとまわりできる家(一巡できる家)
各種の条件により必ず実現できる手法ではありませんが、できるだけ家の中を回遊(一巡)する動線を設けた「ひとまわりできる家」を提案しています。
表動線と裏動線がある「ひとまわりできる家」は、
生活上の様々な利用形態、家族構成の変化等に対応するためのプランづくりにとして、非常に有効な手段のひとつです。

これについては実例と共に別ページ↓にて掲載していますのでご覧になってみてください。
ひとまわりできる家(回遊型プラン)