練馬区大泉の住宅地に建つ2世帯住宅です。
南に芝生畑が広がり、接道が北側という敷地に、新たな2世帯住宅としての建替えを行った家です。
1階はご両親とその親御さんの住まい、2階は子世帯という2世帯・3世代の住宅で、2世帯住宅としてはオーソドックスといえる構成の住まいです。
しっかりとした基本性能の家
1階はご高齢のお母様の部屋の近くに水回りを設けること
2階は広いロフトとルーフバルコニーを設けること
といったご要望を受けた住宅です。
床や造作材は無垢板、その他内装材は漆喰、自然塗料、タイルといった自然素材を多く使用した家です。
他の家と同様、既製品や石油化学製品の使用を極力少なくすることで
「これからの長い月日を共に過ごすことができる味わいと暖かみのある建築」
となることを期待した住まいです。
2階の上部にロフトを設けることから建物高さが比較的高い住宅とする必要があったこと、
敷地や道路に関する法的な条件などから、建築には様々な許認可が必要な住宅でした。
そのようなことから設計完了後、5ヶ月間程の諸手続きを経てようやく着工、
解体工事や地盤調査・改良等を含めて9ヶ月の工事期間、設計開始からは計22ヶ月間をかけて完成した住宅です。
<外観>
敷地は北側が道路、南側は芝生畑が広がる敷地ですので、エントランスや駐車・駐輪スペースは北面に、南面には各諸室が面するようにしています。
建て主さんのご希望から外壁の色は群青色をベースとして、その他の色は黒とグレーのモノトーン色を組み合わせた構成としています。
若干凹凸のある平面計画ではありますが、屋根はできるだけシンプルにすべく、基本的には切妻屋根、一部を陸屋根(テラス)とした家です。
写真上:道路側の外観 写真下:道路からの玄関アプローチ
この地域は高い目隠し塀を設けることができない区域に指定されています。
とはいえ、一般的な化粧ブロック積みの上にアルミフェンスを載せるというのは避けたかったことから
写真のような黒い支柱によるスリットスクリーン状の囲障としたものです。
<1階-親世帯の住まい>
<玄関廻り>
アプローチから正面奥が親世帯の玄関、右手に子世帯の玄関を設けています。
双方の玄関扉上部には、玄関ポーチが建物の北側であっても薄暗い場所にならないように
透明なガラス製の庇とし、各世帯の玄関をひとつの庇でつなぐようにしました(写真:上)。
玄関の床は、アプローチから連続する34センチ角のタイル貼。
玄関の上がり框とはほとんど段差のない形態としています(写真:下)。
玄関には室内側から受け取ることができるポストボックスの他、
さまざまな収納物に対応する大きな壁面収納を設けています。
写真上:外側から望む親世帯の玄関 写真下:収納たっぷりの玄関
<リビングダイニング(1階)>
親世帯のリビングダイニングは南庭に大きく面するように東西方向に長い形状としました。
カーテンボックスの上に間接照明を設け、柔らかな光に包まれる場としています。
ダイニングよりリビングを望む(リビングの右手は寝室、奥は水廻りと親御さんの部屋)
写真上:玄関側よりダイニング越しに南庭を望む(左手はキッチン)
写真下:寝室の引戸を開放(右手に格納)してリビングと南庭を望む
1階の親世帯の床材は、やや赤味があるアメリカンブラックチェリー材。
全ての木部はこの色に合わせたオイルステイン塗りとしています。
<キッチン(1階)>
親世帯のダイニングの北側に設けたキッチンはセミオープンタイプ。
システムキッチンの後方には、造付バックカウンター+収納棚を設けています。
写真上:ダイニングよりキッチンを望む 写真下:キッチンよりダイニングを望む
<寝室(1階)>
生活のシーンによってリビングとつなげてワンルーム化ができるようにした主寝室です。
左手は押入れと収納庫、正面は造付けのクロゼットです。
リビングとの連続性を持たせた寝室です。正面左手に格納した3連の上吊り引戸で仕切ることが可能です。
<親御さんの部屋(1階)>
ご高齢の親御さんの部屋は家の奥の最も静かな場所にしてトイレや洗面所、浴室と隣接した位置とし、
木製天井による落ち着いたインテリアとしました。
リビング同様、カーテンボックスの上部には間接照明を設けています。
写真上:南庭を望む 写真下:部屋の北面を望む(右手は仏壇棚)
<洗面・浴室(1階)>
「浴室は桧の内装で」というご要望を受け、足元廻りはハーフユニットを使用し、
壁から天井廻りはその裏に通気層を設け、仕上材は桧の小巾板貼とした浴室です。
写真上:壁面収納・棚を設けた洗面室
写真下:壁と天井を桧で仕上げた浴室
<2階-子世帯の住まい>
<子世帯用玄関(1階)>
親世帯の玄関と同様に、三和土とほぼフラットに仕上げ、さまざまな収納に対応できるようにした玄関です。
正面は2階の住まいへの階段室、左奥の扉は階段下収納室の入口扉です。
大きな壁面収納を設けた子世帯用の玄関
<リビングダイニング(2階)>
屋根勾配に合わせて天井の高くしたリビング・ダイニングとキッチンです。写真右手、
この空間への入口部分は天井を低くして、その上にロフトを設けています。
正面の階段はこのロフトにつながると共に、ルーフテラスへもつながります。
写真上:キッチンからリビング・ダイニングを望む(右手の廊下の先は洋室やトイレ、クロゼット)
写真下:リビングへの入り口部から部屋の南面を望む(左手がキッチン、その奥はリビングのTV台)
リビングの東面を望む(天井高は高い所で約4..8m)
2階の子世帯は、壁を漆喰でラフに仕上げ、床はタモ材を草木染で仕上げたものを貼りました。
家具や建具、巾木等の木部はこの色に合わせたオイルステイン塗りとしています。
<キッチン(2階)>
キッチンはペニンシュラタイプ。バックカウンターは内装に合わせて造付けとして製作しました。
リビングと一体的なキッチンスペース
<洋室(2階)>
将来2室に分けることができるようにした洋室は東西方向に長くすることで、
2室に仕切った際にも、双方の部屋が南面する配置としました。
写真上:リビングから諸室への廊下
写真下:将来の2室化へ対応する洋室
<洗面室>
洗面脱衣室は洗濯室と仕切ることができるようにしています。
洗濯室の奥、ガラス扉の先にはサービスバルコニーを併設させました。
<ロフト>
リビングからつながるロフトです。切妻屋根の最も高い部分を利用して設けたものです。
<外廻り>
<ルーフテラス>
この家の主要なご要望のひとつであったルーフテラスです。下階、洋室上部に設けたもので、
手摺の高さを高くすることにより周囲からの視線を気にせずに過ごすことができる場所としています。
写真の左手の壁はロフトの外壁です。
<外階段>
ご高齢の親御さんの為、また親世帯の方々の将来の為、設計当初は外部階段脇にスロープを設ける計画でした。
その後、スロープはかえって使いづらそう・・・とのことから、ゆったりとした勾配で手摺付の外階段に変更。茶仙という砂利による洗い出しで仕上げました。
<夕景1(南面)>
芝生畑の先の道路から見える建物の全景(夕景)です。
<夕景2(玄関アプローチ側)>
建築データ
工程
基本設計 2016. 9~2017. 1
実施設計 2017. 2~2017. 5
施工者選定・申請期間 2017. 6~2017.10
工事期間 2017.10~2018. 7
敷地条件
第1種低層住居専用地域、
準防火地域、第1種高度地区
土地区画整理事業施行区域、他
道路幅員 4.00m
外部仕上
屋根:カラーガルバリウム鋼板 竪はぜ葺
外壁:アクリルリシン吹付(外壁通気工法)
開口部:アルミサッシュ(黒)
外構床:340角タイル貼(玄関アプローチ)
砂利埋めコンクリート土間洗出し
玉砂利敷込、樹脂製デッキ組
内部仕上
<1階>
玄関
床:340角タイル、無垢フローリング貼
壁:PB AEP塗
天井:PB AEP塗
玄関扉:アルミ製防火扉
リビング・ダイニング、寝室
床:アメリカンブラックチェリー無垢フローリング(床暖用)
壁:PB カルクウォールこて塗
天井:PB AEP塗
キッチン
床:アメリカンブラックチェリー無垢フローリング(床暖用)
壁:耐水PB キッチンパネル貼
天井:PB AEP塗
お母様の部屋
床:アメリカンブラックチェリー無垢フローリング(床暖用)
壁:PB AEP塗
天井:タモ練付合板貼、着色OSCL
水廻り諸室
床:アメリカンブラックチェリー無垢フローリング(床暖用)
壁:耐水PB カルクウォールこて塗
天井:PB AEP塗
階段
段板:タモ集成材、着色OSCL
壁:PB AEP塗
<2階>
リビング・ダイニング、キッチン
床:タモ無垢フローリング(草木染塗装品、床暖用)
壁:PB カルクウォールこて塗
耐水PB キッチンパネル貼
天井:PB AEP塗
洋室
床:タモ無垢フローリング
壁:PB AEP塗
天井:PB AEP塗
水廻り諸室
床:タモ無垢フローリング
壁:耐水PB カルクウォールこて塗
天井:PB AEP塗
<その他>
キッチン:タカラ、LIXIL
レンジフード:アリアフィーナ
洗面台:デュポン・コーリアン製造付家具
床暖房:エステートプラン
(ガス温水式、遠赤外線仕様)
浴室(ユニットバス、ハーフユニット):TOTO
断熱材:セルローズファイバー充填、
水性発泡ウレタン
床下防腐・防蟻剤:ホウ酸散布